Patrik Kriššák

パトリック・クリシャーク

Artist

He Meets Special BRAASI backpack.

チェコのプラハを中心に活動されている画家のPatrikさん。人や、動物や、自然など幅広いテーマでビンの側面を使って回転式のキャンバス台の上に絵を描きます。社会問題や環境問題にメッセージを込めた彼の作品を見てみると、そのテーマごとに受ける印象は大きく変わります。

デザインマーケットで2014年にBRAASIの設立当初の創設者の二人と出会い、彼らとは数年来の付き合いがあるそう。

チェコでは珍しい、バケツをひっくり返したような土砂降りの4月のある日。プラハにあるPatrikさんのアトリエでBRAASIのご家族と一緒にお邪魔してお話をうかがってきました。

ブラシとパレットを持って

キャンバスに向かうのは退屈すぎる

よくある「幼少期から絵を描くのが大好き」みたいなバックグラウンドは僕の場合はなくて、高校に入るまではごくありふれた学生だったんです。

高校生のときから絵を描くことが好きになって、大学では家具のことや芸術を学びました。

しかし画家として生きる勇気が当時はなく、大学卒業後はそのまま社会人として普通に働く生活をしていました。

でもやっぱり描くことが大好きで、画家として独立するまでの3-4年は昼に仕事をして、夜に絵を描く生活をしていました。

やらなければならないことと、やりたいことを両方する日々は心身ともにしんどかったです。

独立してアトリエを構えて、今はドイツにもアトリエを持っています。環境を変えたいときはドイツに行きます。場所を変えると新しいインスピレーションを得ることができるからです。

独自の方法で

キャンバスに色彩を乗せて

作品と向き合うにあたって、初めから一貫して変わらないことは、ビンを使って描いていることです。初めは1−2色のみで、1種類の幅で描きました。

次にやってみたのは、描いた後に引っ掻き傷を残すこと。それから、パステルを使って作品に色彩と深みを出すことができました。

小さいサイズの瓶が欲しくて買ったものの中に入っていたグリッターも作品に使ってみました。それをきっかけに、チェコグラスが原料の粉末も使ってみました。

グリッターとは違い、重みがあるチェコガラスパウダーは均等にはキャンバスには乗らないけれど、その分作品に影や深み、重みやより複雑な構造ができました。

チェコに住んで10年、

ドイツのアトリエと行き来する刺激的な日々

スロバキアで生まれ育ちましたが、10年くらい前からチェコに住んでいます。今はアトリエを二つ持っていて、もう一つはドイツ東部のドレスデンにあります。

新しいインスピレーションや新鮮な空気を求めて、定期的にドイツのアトリエでも活動しています。

移動するときはだいたいこのバックパックと一緒です。用途によって使い分けている数冊のノートや本、キャンバスもなんでも入るサイズなので気に入っています。

(お話の途中でバックパックの中からマジシャンのようにりんごを出してみせてくれたお茶目な一面も。)

BRAASIのデザインに心奪われ、

「私の絵とそのバックパックを交換してくれませんか?」

BRAASIと出会ったのはデザインマーケットの催事でのこと。BRAASIが生まれたばかりの2014年のことでした。

創設者の一人であるEliskaが長いファーでできた初期の冬仕様のデザインのものを使っているのを見て一目惚れしました。

当時お金はそんなになかったので、心を奪われたものの、購入することはできませんでした。

そこで私は、「私の絵とBRAASIのバックパックを交換してくれませんか?」とEliskaに頼みに行きました。Eliskaはとても驚いているようでしたが、私の作品を気に入ってくれて、交換することになったのです。

あれから8年。今使っているBRAASIのバックパックは3代目です。交換だけではなく、BRAASIの夫妻は絵をいくつか購入してくれました。

(BRAASIのファクトリーにある絵だけでなく、自宅のトイレ以外のほぼ全ての部屋にあるのはPatrikの作品だそうです。創設者のEliskaは彼の絵をリスペクトしているので、トイレにだけは置かないと言っています。)

アートを通じて伝えたい、

"みんながやっているから"それでいいのか?ということ

作品はいくつかのシリーズごとにテーマがあり、それらの全てに社会へ向けたメッセージを込めて制作しています。

世の中で当たり前に行われていることとか、テクノロジーの発展で変わりゆく生活に何の疑問も持たず、ただそれらを大多数の周りと同じように受け入れる人がほとんどだと思います。

でもよく考えてみると、倫理的にどうなんだろうとか、これって本当に正しいことなのかって疑問に思うこともよくあります。

例えば人間本位で考えたら「豊かで素敵な暮らし」に思えるペットや植物に囲まれた生活。でもそれを動物本位や植物の目線で考えてみたら、、、意思に反した場所に閉じ込められていてかわいそうです。

地球温暖化でサンゴ礁が絶滅の危機にあることを気に留めない人、

ペットや植物を所有物のように扱う人、

ステレオタイプで思考回路が支配されている人、

私はそんな人たちに伝えたくて絵を描いています。

考えを押し付けたり、何かをするのを強制したりしたいわけではありません。

でも、”みんながやっているからやる”、 ”やらないといけないことで手一杯だから本当にやりたいことから目を背ける” そんな生き方でいては欲しくないんです。

それに地球で起きている重大な変化にも注意を払って欲しいんです。

画家として生きることが難しくても、

それでも諦めない理由

チェコ国内だけでなく、どこの世界でも新鋭画家は手厚くサポートされることはあまりなく、それどころか搾取され得る立ち位置にいます。

成長を支えるギャラリーは十分に発達しておらず、コレクターたちとの関係にも明確な上下関係ができてしまうのが現実。

金銭的にも、精神的にも余裕がないうちは、じっと耐えるしかないのだと思います。そんな状況だとしてもやっぱり私は表現することやアートが大好きだし、しんどいからその世界から離れてしまうという選択肢は私にはありません。

諦めない心を持ち続ければ、少しずつでも状況は絶対に良くなります。

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PROFILE

Patrik Kriššák(パトリック・クリシャーク)

1986年生まれ。チェコとドイツを拠点に、社会問題や環境問題をテーマにメッセージ性のある作品を独自の方法で制作する。チェコ国内外で個展を定期的に開催している。

HP:https://www.patrikkrissak.com/en

Instagram:https://www.instagram.com/patrikkrissak/