柴崎 まどか

Madoka Shibazaki

Photographer・Designer

今や、カメラを持っていなくても
スマートフォンで誰でも気軽に写真を撮り
SNSで全世界へと発信ができる時代。

しかし宣材写真や写真集などの撮影には、
やはりいつの時代でもプロの力が不可欠だ。

そんな現代に、SNSで発信を続けながら、
広告、ファッション誌、カタログ、写真集の撮影、
ときには写真集などのデザインまでも手がける
多才なフォトグラファー、柴崎まどかさん。

最近では映画のスチール撮影にも挑戦し、さらに活動の幅を広げている彼女に、
フォトグラファーになるまでの軌跡や
自身にとっての「写真」という存在について、
そしてBRAASI INDUSTRY『NOIR』とファッションの関係性について、
お話をうかがった。

アパレル業界のデザイナーやアートディレクターを経て

「自分の好き」と「褒められたこと」が交わる写真の道へ

写真をはじめたきっかけは、友達が持っていた一眼レフカメラでした。その子のお父さんのカメラだったのですが、200mmくらいの大きなレンズがついていて。借りて試しに撮ってみたら、「全然違う!下手くそな私が撮っても、カメラの力でこんなに違う写真が撮れるんだ……!」って、衝撃を受けたんですよね。それで、高校最後のクリスマスに「誕生日とか込みで、もういっそのこと一生分なくていいから買って!」ってお父さんにおねだりしてNikon D60を買ってもらいました。

高校卒業後は、グラフィックデザイナーかアパレル関係かで迷った末に服飾専門学校に入って、アパレルの会社にファッションデザイナーとして就職しました。ただ、入社した会社は3人しか社員がいなかったので、商品撮影、カタログデザイン、バナー制作といった仕事まで、全部私の担当になっちゃって。だから、会社の経費で学校に通って、IllustratorやInDesignの勉強をしながら仕事をしてたんです。

そしたら、自分でデザインしたものが仕事として世に発表されることが楽しくなっちゃったんですよ。その楽しさが勝って、すぐ転職してアートディレクションの仕事をするようになりました。ディレクション側に立ったら、よくスタジオ撮影に立ち会うこともあるんですけど、その結果今度は、「こっちもめっちゃ楽しそう!」って心がどんどん写真の方に惹かれていきました。

思い返せば、前職で商品撮影用にライティングの機材を揃えたとき、結構わかりやすく写真が上手くなった実感があって、技術を取り入れたら顕著に上達するのが見える写真って面白いなと思ったんですよね。それと同時に、友だちと散歩しながら撮ったポートレートをTwitterに投稿してみたら、自分が思ったよりも大きく反響があって、「え、私写真で生きていけるかも!」って思っちゃったんですよね。

私、子どもの頃から褒められることがあまりなかったんですよ。自分に自信が持てないまま大人になってしまって、でも写真はすごく人から褒められたんです。それに、自分の写真は自分でも好きだと思えるものだったから、「これを仕事にしたい、ずっとやっていたい」と思って、その会社も退職しました。

そこからは、「もうフリーでやっちゃおう、カメラマンって名乗っちゃおう!」って。それが25歳のとき。実は20歳くらいのときから、「私は会社員に向いてないから25歳くらいに起業しよう」と思ってたんですよ。それで、半ば強引にフリーランスになりました。

フリーランスになった当初は、「SNSに写真を投稿し続けながらフリーランスになったってことをアピールしておけば、仕事なんて来るだろう」っていう超甘い考えでいて……まあそんな簡単にいくはずもなくて。でもプロアマ混合の展示会に出展させてもらった縁から、のちに3名のフォトグラファーの方々のアシスタントをさせてもらうようになったんです。ここに来てやっと仕事のやり方を学んで、それを生かして今は少しずつお仕事をもらえるようになってきました。

私にとって「撮ること」は

衣・食・住と同じような存在だから

フリーランスになったのは、「勇気があったから」というより、「会社から逃げ出したかったから」なんですよね。たぶん私、毎日同じ場所に通えないんです。その性格は幼稚園の頃からすでにスタートしてて、学校もめっちゃ苦痛でした。昔から続けることが苦手なんですよ。でも唯一、長年続けてこれたのが、写真でした。毎日違う人を撮るし、違う場所に行くし、新しい発見が次々出てくるんです。ずっと成長できてる感じがするというか。その時々で目指す写真も違うし好みも変わってくるから、たぶん一生完璧にはならない。それが面白いんです。

たまに飽きるんですけどね。一瞬、「なんで撮ってたんだっけ?」みたいになるときがあるんです。でも次の日になったら、撮らずにはいられなくて。「写真は生活の一部」って感覚がありますね。「衣・食・住・写真」みたいな(笑)。

写真の仕事は楽しいんですけど、仕事の方の撮影ばかりが続くとつまらなくなって、うずうずしちゃいます。何て言うんだろう……発散してるんですよね、写真を撮ることで。それが出せないと溜まっていく感じがして、仕事だけじゃだめだなって思います。「最近プライベートで撮ってないなあ」って思うと、ついつい友だちに「撮りに行こうよ!」って連絡しちゃう。

人が好きなんで、人を撮りたくて誰かを呼びますね。その子の一番いいところ、かわいい顔を撮りたいなって思いながら撮ります。風景とかも面白いとは思うんですけど、それなら誰かと見た風景の方がいいって思っていて。あと、撮るからにはその写真をみんなに見てもらいたいし、「この写真めっちゃいい!」「この子もめっちゃかわいい!」って感じで、写真そのものと被写体、両方の魅力を感じてもらいたいですね。

相手の表情を引き出すために愛嬌は必須

いつでも100%の写真を出したい

仕事する上で一番大事だと思ってるのは、愛嬌。しゃべりやすさ、コミュニケーションの取りやすさみたいなところですね。「敵じゃないよ」っていうスタンスは、相手の表情を引き出す上で重要だと思ってます。写真を撮ることってコミュニケーションだから、「かわいい」って言ったら、かわいくなるんですよ。おだてる感じの「いいねえ〜かわいいねえ〜」じゃなくて、心の底から出る「かわいいっ……!」って感じで、いつもこぼれるように言っちゃいます。

あと最近は、仕事でもなるべくプライベート撮影のときと同じように撮れるようになりたくて。仕事の写真って、堅くなりがちというか……いかにも「仕事の写真」ってなるのがちょっと嫌なんですよね。結構顕著に、写真に自分の緊張感とかが出るんですよ。他の人からすればわからないのかもしれないけど、プライベートのときはリラックスしてるし撮影相手も知ってる人だから、そこに違いが出る。プロとしてそこはちゃんと両方同じように撮りたいって思いますね。どちらでもフラットに自分の100%を出したいです。

撮影は荷物が多くなりがち

だから、バックパックはシンプルに

プライベートの撮影、特にスナップを撮るときは、なるべく身軽な状態で出かけたくて。でもパソコンはいつも持ち歩くし、結局必要なものを揃えるとリュックだけじゃなくてカメラバッグも一緒に持ち歩くことになる場合が多いんですよ。だからリュックぐらいは見た目がシンプルなのにしたいなと。

以前持ってたバッグが、パソコンとカメラの重さに負けてボロボロになっちゃって。それからずっと、防水タイプでパソコンが入るシンプルなバッグを探してました。『WEBBING』とか『WICKER』とかみたいに、ウェビングがあるタイプも気になったんですけど、使いこなせる自信がなかったので『NOIR』を選びました。シンプルだし、営業に行くときに使うiPadがぴったり入るポケットもあって、これを選んですごく良かったです。

あと、BRAASIのウェブサイトのこの商品写真、バッグの中に猫が入ってたんですよ!猫入れられるのかな、とか考えました。もし他のバッグに入ってたら、そっちに気持ちが揺らいでたかもしれません(笑)。

かわいい服にもカチッとした場にも合う

オールラウンダーなバッグ

今日はこの取材の前に撮影があったのでパンツスタイルなんですけど、普段のファッションとしては、ワンピースが好きなんですよ。『NOIR』はワンピースにも合うし、かわいい感じの服に合わせても締まっていいですよね。すごくシンプルで何にでも合うから、カチッとしたビジネスの場面でもOK。オールラウンダーなバッグだと思いますよ。

『NOIR』はシンプルでいいんですけど、ウェビングがあるタイプも、実物を見たら女の子が背負ってもかわいいなあって思いました。しかもそのウェビング部分の使い方、池田さんのインタビューでビア樽を見てから無限大の可能性を感じてしまって……。三脚も入れられそうだし、ちょっとこっちのタイプもほしくなっちゃってます。

成長できなくなるところまではいきたい

そして「自分の場所」を持ちたい

最近は映画のスチールを撮ったりもするようになって、現場で音を出さないためにミラーレス一眼カメラを購入したんです。せっかく買ったから動画も撮らないともったいないなって思って、個人的に動画の撮影や編集もはじめてみました。ミラーレスで撮れる動画は、スマホと比べものにならないくらいキレイで、はじめて一眼レフを使ったときみたいな感動がありましたね。これがもう、めっちゃ楽しいんです!だから、これも仕事にしてみたいと思ったりもするんですけど……映像のプロの方々は本当にすごいから、とても敵わない。今のところはやっぱり、写真で食べていきたいなと思ってます。

先日、憧れの女優さんを撮る機会があって、「フォトグラファーとして私もとうとうここまで来れたんだ……」って感動しました。でも別にそこがゴールではないし、成長できなくなるところまでは行きたいですね。徐々に自分がやりたかった仕事をやらせてもらえるようにはなってきたけど、まだ全然成し遂げてる感じはしなくて。成長の限界が見えるときが来るのか自体わからないけど、このまま一生写真を撮ってる気がするし、とりあえず突き進んでいきたいと思っています。

ただ今は、ちゃんと仕事とプライベートの両立もさせたいなとも思ってて、いずれ結婚して子どもができてとか、今後のライフステージの変化に合わせて、仕事の仕方もシフトしていくかもしれないですね。撮影自体かなり体力を使うから、年齢を重ねたら難しくなってくるかなっていうのもあって、アシスタントにつかせてもらっている若山和子さんみたいに、いつかスタジオを持ったりとかできたらいいな、と考えたりします。

ずっと20歳のときから起業したいと思ってたくらい、私は「自分の場所」みたいなのがほしくて、そういう場所づくりをすることがひとつの目標ではあります。ざっくりですけど、なんとなく35歳くらいに拠点を見つけたいかな。まあでも20歳のときに25歳で起業するって言って実際にそうなってるし、公言しておけば本当にそうなるんじゃないかなって思ってます(笑)。

この日は、いつも持ち歩くパソコンと撮影衣装をバッグいっぱいに詰めて登場。カメラバッグもよく一緒に持ち歩いている。

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PROFILE

柴崎まどか(Madoka Shibazaki)

1990年生まれ、埼玉県出身、東京都在住。
雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真撮影など幅広く活動中のフリーランスフォトグラファー。
服飾専門学校卒業後、アパレルデザイナーとして3年間勤務。在職中にウェブデザインを学び、並行して独学でDTPデザインを学ぶ。その後某大手アパレルメーカーに転職し、アートディレクション部署にてファッション広告のディレクション、デザイン業務を経験。その経験を活かし、現在デザイナーとしても案件を請け負う。生きている人、動物、誰かが生活している場所を好み、ファッション、アートを取り入れた様々な切り口から撮影に挑んでいる。 

HP:https://www.shibazakimadoka.com/
Instagram:https://www.instagram.com/shibazakimadoka/
Twitter:https://twitter.com/shibazakimadoka