松田 健

Ken Matsuda

Creative Director

今や「広告」が求められる役割は、
「ものを売ること」だけにとどまらない。
こうした時代の変化の中で目覚ましい
活躍を見せるクリエイティブ・ディレクター。
それが松田健さんだ。

誰もが知る有名企業から、
これからの世界を変えるであろうスタートアップ企業まで。
「世の中にいいインパクトを与えられるもの」を目指し、
さまざまなコミュニケーションを手がける松田さんに、
仕事のこと、今興味があること、ファッションのこと、
そしてバックパックのことなどをうかがった。

クリエイティブ・ディレクターとして

さまざまなコミュニケーションをつくる

大学卒業後に新卒でADKに入社。2年目にクリエイティブテストを受けてコピーライターになって、CMや雑誌、新聞に出稿される広告のコピーを書いていました。その後、2014年くらいからクリエイティブ・ディレクターとして、SNSやイベント、PRなども担当するようになって。この頃では「どうニュースをつくるか?」という視点でプロジェクトを進めたり、コンサルタントに近いかたちで企業のコミュニケーション活動全般を考えていく仕事が多くなっていきました。

広告のクリエイティブの世界には、大きく分けて、コピーライター、CMプランナー、アート・ディレクターという3つの職種があります。簡単に言うと、コピーライターは言葉周りを担う人。CMプランナーはCMのストーリーを考える人。アート・ディレクターは広告のビジュアルを考える人ですね。自分で言うのも変ですが、その中で活躍した人がクリエイティブ・ディレクターになって、チームやプロジェクトを統括する役割を担います。言葉、映像、ビジュアル……つまりは、コミュニケーション全般の責任者がクリエイティブ・ディレクターということになります。

世の中にちょっとでもいい

インパクトを与えたい

最近、担当した仕事では大手回転寿司チェーンのコミュニケーション施策があります。これは「山手線を回転寿司」にするというもので、駅のホームドアと車体、両方の広告スペースを組み合わせるという、おそらく日本初の試みでした。ホームドアをカウンターに見立てて、そこに寿司に見立ててラッピングされた車体がやってくるんです。電車が来る前から、ホームドアの装飾で椅子が置いてある店内のように見せて、「これは何だろう?」と思わせておいて、そこに寿司(=電車)が来る!というもの。

これは場所や使えるスペースに合わせた生まれた広告のかたちですね。実は山手線の車体POPって面積などの制限が厳しくて、あまり大きな寿司は表現できなくて。でも、そういう制約がある中で、最大限の面白さとつくる方法を考えたり、クライアントに向けて業績へのインパクトを説明したり……そういう仕事をしています。

僕はいつも、「自分が入ったことによって、世の中にちょっとでもいいインパクトを与えられる仕事」がしたいと思っています。特に「自分が入ったことによって」という部分を大事にしていて。表現は何でもいいんですけど、それを見た人が、その日、ちょっと幸せな気分になれるということもあれば、その商品を広めることで何か新しいことが起こるかも知れない。あってもなくてもいいものではなくて、あったら世の中がよくなる。そんな仕事を目指しているんです。

テクノロジーと世の中とをつなぐ

「翻訳」をライフワークに

最近は、テクノロジー全般にすごく興味があって。SCHEMAというプロジェクトを立ち上げたのもそれが理由でした。さっき「世の中にちょっとでもいいインパクトを」という話をしましたが、ブロックチェーン、AI、ゲノム編集……テクノロジーの領域には世界を変えるようなテクノロジーがいっぱいあって、本当に面白い。それを上手く世の中に翻訳していくというのを、自分のライフワークにしていきたいと思っていて。

だから、SCHEMAでは、そういったテクノロジーの領域で起業したスタートアップ企業のアドバイザーなどの仕事に取り組んでいます。まだ知られていないテクノロジーをどういうサービスや商品にしていくのかを考えたり、CEOの方のプレゼンテーションを指導したり……が、僕の担当。他のメンバーとも協力しあって、大企業とスタートアップの企業をマッチングさせて、新しい事業をつくるところまでを進めています。

ファッションは大切なツール

30足の靴下で仕事との向き合い方をつくる

ファッションにはこだわりがある方だと思います。ブランドでいうと、好きなのはsacaiですね。基本は自分の好きなものを身につけるというか、感覚的に「これが好き」っていうものを選ぶことが多いですけど、一方で、仕事の場となると少し話は変わってきます。僕よく「美容師と同じだ」という話をするんですが、例えば表参道の美容室に髪を切りに行ったとして、美容師さんがだっさい上下のジャージを着てきたら嫌じゃないですか。

僕らの仕事もそこは同じで、クライアントに「この人だったら自分たちが考えられないようなこと、つくれないようなものをかたちにしてくれそうだ」という期待感を与えることが大事だと思っているんですよね。だから、クライアントに与えたいイメージを想い描いて、「知性が求められているようならこうしよう」とか、「ぶっ飛んだことを求められているようならこうしよう」みたいに、ファッションを使ったコミュニケーションは意識していますね。

例えば、僕は靴下が好きで30足くらい持っているんですけど、音楽系の仕事のプレゼンをするときはギターの柄の靴下で行ったりとか、外苑前にあるスタートアップに行くときは、銀杏があしらわれた靴下で行ったりとか……プロとしての意識もありますけど、こういうのがやっぱり楽しいんですよね。いかに自分がおもしろがって仕事と向き合えるかを考える上でも、ファッションは大事なものだと思っています。

バックパック選びの基準は

機能性とデザイン性のバランス

BRAASI INDUSTRYと出会ったのは、ちょうど新しいバックパックを探しているときでした。以前は見た目重視でハイブランドのトートバッグやショルダーバッグを選んでいたんですけど、腰を痛めてしまって……パソコンを持ち歩くので、もうバックパックに一択になっていて。でも、機能性ありきでデザイン性がイマイチなものが多かったんですよね。

僕がここで求めている「デザイン性」っていうのは、「好きな服と合うかどうか?」という部分が大きいんですが、sacaiの服に合わせたりすることを考えると、アウトドア系のバックパックはちょっとゴツすぎるんですよ。その点、BRAASI INDUSTRYは機能がデザインに落ちている感じがしました。

その中で、かたちや大きさで考えて選んだのがWICKERですね。パソコンを入れるスリーブもあるし、実物を見てみたら、「これ意外とどんなシーンにも使えるな」と思って。キレイめなスタイルでも違和感を出さずに、ちゃんとハズしになる。建築家がデザインしたという部分がこういう面に出ているのかなって。

ビジネスシーンからキャンプまで

これ1つでこなせるのがいい

使ってみてまず感じたのは、めちゃめちゃ量が入ること。月一でパーソナルトレーニングに通っているんですけど、その荷物を入れても余裕があるんですよ。一泊の出張どころか、キャンプもこなせる。

あと、ウェビングも便利ですよね。雨の日は折りたたみの傘を収納したりするんですけど、これまでは、「今日は傘を持っていこう」と思っても、入れ忘れてしまうことが多かったんですよね。でも、ウェビングなら、傘が入っているかどうかが一目瞭然なんです。それから「WICKERに合う水筒」を探して、自分で淹れたコーヒーを持ち運ぶようになりました。真夏には首掛けのヘッドホン型扇風機をつけていましたが、あれもめちゃ便利でしたね。

僕はいちいちカバンを持ち替えるのが面倒くさいと感じる人間なので、ビジネスの場からキャンプまで使えるのはすごく便利。それから、本体を閉じるロール部分の使い方にもこだわっていますね。普段、仕事のときは端を内側に折り込んでキレイめな印象に。キャンプで使うときは外側に出してアウトドアな感じに……と、使い分けています。

僕が仕事で関わるカメラマンや制作関係の人たちって荷物が多いんですよね。それでいて、現場では、ほしいものをすぐ取り出せた方がいい。だから、クリエイティブな現場に近い人にはすごくいいんじゃないかな。

WICKER に合わせてセレクトしたというRIVERSの水筒。まるで純正オプションのようなまとまりのよさ。中には松田さんが自ら淹れたハンドドリップコーヒーが入っている。

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PROFILE

松田健(Ken Matsuda)

株式会社ADKクリエイティブ・ワンでクリエイティブ・ディレクターを務める。戦略からCM、デジタル、プロモーション、PRまで幅広い領域に精通。経営層と会話しながらブランド構築することを得意とし、大規模な統合型キャンペーンや新商品ローンチを数多く手がける。